落とした「。」の拾い方

「。」を探す日々

日常のおはなし

 

祖母が私の靴を磨いている

 

 

気にしなくていいよと言うけど

毎日家にいるから暇なのよ。

ときいてもらえない

 

祖母は明るい場所が好き

 

自然の明るさが好みの私が

朝の光を楽しんでいても

暗くない?と電気をつけられてしまう

 

もちろん祖母が部屋に戻ったあと消すのも

もう慣れたもの。

 

決まって祖母がいう台詞がある

 

「私は〇〇電力の娘だから暗い場所は嫌いなのよ」

 

「空襲の時も暗幕して電気をつけていたわ」

 

と。さすがお嬢様、格が違う。

と同じ家にいながら庶民の私は思う

 

祖母はとてもマイペース。

 

掃除が趣味、バリバリの営業マンだった祖父とは

対照的で毎日喧嘩が絶えない。

 

でも20代で結婚してもう88歳、

喧嘩するほど仲がいいとはこのことなのか。と

いや、毎日言い合いをきかされる

私の身にもなってもらいたいものだけれど。

 

祖母は祖父と出会って「しまった」とよくいう。

 

働きたくなかった祖母、

裁縫が得意で自宅で教室を開いていたが

友達に誘われ嫌々某電話会社に勤め始め

そこで祖父と出会う。

 

祖父に何故祖母と結婚したのか問うと

「家を持っていたから」と嘘か本当か

わからないことしか言わないが

私は知っている。

結婚当初の白黒写真、

楽しそうに微笑む祖父母。

アルバムには水玉のワンピースを着た祖母の

無邪気な笑顔の写真。

これはどこからどうみても素敵な夫婦。

真面目なバリバリ営業マンが

お天馬マイペースお嬢様に恋をしてしまったわけだ。

 

(祖父の生い立ちと仕事の立ち回りは

スケールが違いすぎて

しがない経理担当の私は

そんなことできるの?やば。と

祖父の腕に脱帽することしかできない。

この話はまたいつか。)

 

 

祖母はかわいいものがすき

 

 

キティちゃんがすき、おしゃれがすき、

ラーメンがすき、かわいいもの、きれいなものがすき

 

自室のベッド周りには

家族からのプレゼントのキティちゃんが

所狭しと並んでいる。

 

必要最低限のものしかない祖父の部屋とは

また対照的である。

(でもね、私からのおみやげのキーホルダーとかはちゃんと壁に飾ってあるの、おじいちゃんだいすき)

 

 

 

もう3時だ

 

 

起きたらまた

人工光の明るいリビングで

祖母とお話をしよう

 

耳の遠い祖母、いつも補聴器つければいいのに

なんて考えはとうの昔に捨ててしまった

 

今日も明るく

おはようって話しかけよう

何回も、聞こえるまでお話しよう

 

 

祖母が私の靴を磨く前に。